政治

岸田よ、このままだと韓国の二の舞だ…ヤバすぎる日本が大復活するための衝撃の秘策 年金100万円アップの具体的方法

賃上げだけじゃ足りない

鈴木 岸田総理は「賃上げ」で経済の好循環を作り出そうとしている。実現するか分かりませんが、間違った政策ではないと私は考えています。

しかし働く人の4割を占める「非正規雇用」と4000万人いる「年金受給者」が取り残される、という問題がある。特に年金をもらっている人は、賃金上昇でインフレが加速すれば損する仕組みになっています。「マクロ経済スライド」により、年金の伸び率は物価上昇よりも抑えられるからです。賃上げで置いてけぼりにされる年金受給者を救うという意味で、「年金アップ」は正しいと私は考えます。

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松尾 国民年金だけの人の場合、満額でも月6.5万円しか収入がありません。私は京都で単身赴任をしているのですが、6畳+ダイニングの部屋の家賃がちょうど6.5万円ほどです。国民年金しかなければ、家賃だけで収入が吹き飛んでしまう。

鈴木 実際、多くの年金生活者が年金では足りず、貯金を取り崩しながら暮らしている。老後の家計は平均で月5.5万円の赤字という統計がもとになって、「老後30年で2000万円が必要」とも言われています。

岸田総理の政策はチグハグ

松尾 経済学の観点から言うと、岸田総理の政策はチグハグで、むしろ景気を冷え込ませるリスクさえあります。賃上げすると同じプロジェクトをするにも必要な資金が増えるのに、日銀を金利を上げる方向に向かわせている。いま賃上げすれば、企業は設備投資などをますます控えるようになるおそれがあります。

韓国では過去に似たような事態が起きています。'17年に誕生した文在寅政権は「賃金アップ」を掲げ、就任後2年間で3割近く最低賃金を上げた。ところが中央銀行が利上げ政策を実施したことで、景気が停滞してしまったのです。日本も同じ轍を踏む可能性がある。

そこで経済を向上させる起爆剤として考えられるのが年金アップです。

鈴木 年金を増やした場合の経済効果について、私はやや懐疑的です。たとえば東京都の「子供一人月5000円、所得制限なしの子育て支援」なら子育て世代はもらったお金を使うので、2.5倍程度の乗数効果があるかもしれない。1200億円の税金で、3000億円規模の経済効果が生まれれば、税金投入の元はとれます。

では年金の場合はどうか。裕福な人たちは増額分を消費に回さず、タンス預金にするかもしれない。そうなると投入したお金が眠ってしまいます。

 

現役世代も幸せになる

松尾 鈴木さんの懸念はよく分かります。しかし私は、年金世代だけでなく現役世代への影響についても考慮したほうがいいと考えています。現役世代は「年金が減らされる」と言われ続け、日々の支出を減らして「老後のために備えなければ」と考えている。しかし年金がアップして「老後は確実に安定した暮らしができます」となれば、未来を気にせずにおカネを使えるようになるのです。

鈴木 なるほど。「将来が不安だから、おカネを使わない」という現役世代の考え方を変えられれば、経済が成長していく可能性はありますね。年金受給者による経済効果がそれほどないとしても、トータルで見ればプラスになる可能性がある。

松尾 「年金アップ」には、若い世代からの反発があるかもしれない。しかし高齢者の問題は、若者自身の問題でもあることを忘れてはいけません。高齢者の年金を減らせば、未来の自分を苦しめることになる。裏を返せば、年金を上げることは「高齢者優遇」ではなくて、未来の自分たちを助けることになるし、景気がよくなって現在の自分たちにとっても得だと考えるべきなのです。

鈴木 では、どんな制度設計ができうるのか。ポイントは(1)すべての人に、(2)税金をつかって、の二つです。現在の年金制度は、言葉は悪いですが「詐欺」のようなものです。現役世代から保険料を集めて高齢者に配っているけれど、実際は足りないから税金で補填している。若い世代は、年金制度のために保険料と税金をダブルで払っています。

それなら、追加分は最初から税金を原資にして「長生き手当」のような形で配ったほうがいい。そして保険料とは関係ない仕組みにする以上、すべての人が受け取れるようにすべきです。

松尾 鈴木さんの言うような制度にすれば「ロスジェネ」('70~'84年頃生まれで就職氷河期を経験した世代)を救うこともできますね。この世代には年金保険料を納めておらず、将来は無年金になる人が多くいます。

 

長生きしたくなる日本に

鈴木 結局のところ、これは「人間の尊厳」に関わる話なんです。これまでも、収入が少ない人には「生活保護」という選択肢があった。事実、国民年金だけを受給している人は、生活保護を受給したほうがおカネは多くもらえます。しかし、その代わりに行政から「贅沢はダメだ」などと口を挟まれ、尊厳を奪われる。だから、我慢して生活保護を申請しない人が多いのです。もし誰もがもらえる年金が創出されれば、こうした人も幸せに暮らすことができます。

松尾 とはいえ「財源は?」というツッコミがどこかから入りそうですね。

鈴木 約4000万人いる年金受給者全員に月8万円、年間100万円近い金額を配った場合は約40兆円かかります。かなり大きい金額ですが、「75歳以上を対象にする」といった条件をつけるという手もある。こうすれば対象は約1900万人に減り、必要な財源は約19兆円となります。

'23年度予算は過去最大の114兆円となりましたが、無駄を削れば5兆円程度は確保できると思われます。また、医療費の自己負担を上げる方法もある。必要もないのに病院に行って薬をもらう人も減り、医療費の無駄も減るはずです。

松尾 病気は自分自身でコントロールできない場合もありますから、私は医療費の自己負担を増やす案には賛同しかねる部分があります。ただ、鈴木さんの案のように健康で長生きするインセンティブを与えれば、結果として医療費は節約されるでしょう。

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