政治

マンハッタンの片隅に中国の海外警察、FBI「我々の国土で違法な活動は言語道断」

米当局が中国の「海外警察」とみなす事務所が入っていた中華街のビル(8日、米ニューヨーク・マンハッタンで)=金子靖志撮影

 【ニューヨーク=金子靖志、ワシントン=蒔田一彦】中国政府による米国内の中国人や中国系住民らを監視する動きに、米司法当局が対応を強化している。4月には、「海外警察」と呼ばれる中国公安当局の出先機関を巡り、米国内で初となる関係者の逮捕に踏み切った。中国が各地の華僑コミュニティーにスパイや協力者を潜り込ませているとされる実態が浮かび上がってきた。

 5月初め、ニューヨーク・マンハッタン南端にある中華街の一角。飲食店や診療所が入る雑居ビルの4階を訪れると、中国語で「美国福建会館」と書かれた看板をかけた部屋があった。昨年10月に連邦捜査局FBI)が海外警察の拠点だとして捜査に入った場所だ。階下の診療所で働く女性は「昨年まで人の出入りがあったが、言葉を交わしたことはなく、何をしているか知らなかった」と話した。

 ニューヨーク連邦地検などによると、逮捕された盧建旺(61)と陳金平(59)の両容疑者は昨年初め、この拠点を開設し、中国反体制派の監視や中国政府に不都合な活動の妨害を行っていた。司法当局は、2人が、米政府に事前通告せずに外国政府の当局者として活動することを禁じる連邦法に違反したとし、中国政府当局者との通信記録を携帯電話から削除したことも司法妨害にあたると判断した。

 FBIのクリストファー・レイ長官は4月27日、下院公聴会で「中国政府が、我々の国土に拠点を設け、無許可で違法な法執行活動を行うことができると考えるのは言語道断だ」と述べた。

 人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」(本部スペイン)が昨年12月に発表した報告書によると、海外警察の拠点は50か国以上で確認され、米国ではニューヨークやロサンゼルスなど少なくとも6か所あるという。取材に応じた米国に住む中国の民主活動家は「判明しているのは氷山の一角。中国当局は米各地にある『同郷会』『同窓会』『商工会』など様々な団体の中に協力者を作り、我々を監視している」と話した。

 昨年3月には、天安門事件の元学生リーダーらが設立し、ニューヨークを拠点に活動する団体の事務局長を務めていた男(当時73歳)がスパイ容疑で逮捕された。男は民主活動家らの陣営にありながら、中国国家安全省の指示で、活動家らの情報を集めて報告していたとされる。男と旧知の仲というメンバーの一人は取材に、「彼は経済的に困り、報酬目当てで情報を売っていたようだ。人の弱みにつけ込むのは中国共産党の常とう手段だ」と憤った。

 FBIは、中国当局による中国系住民への監視や脅迫は世界各地で行われているとして、各国の捜査機関との連携を強めている。

 カナダの公共放送CBCによると、カナダ政府は国内の「海外警察」拠点への調査を開始した。ただ、カナダには外国政府当局者の活動に関する法律がなく、取り締まりの限界も露呈している。

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